麻薬を納品したときや、処方箋に基づいて調剤したときには、麻薬帳簿への記載が必要です。
ただ、麻薬を扱う機会が少ない薬局では、
「受入と払出はどう書けばいいの?」
「残量を間違えたときはどう訂正するの?」
と迷うこともあるのではないでしょうか。
私自身、新人薬剤師だった頃は麻薬帳簿の記載にも不慣れで、一つひとつ上司に確認してもらいながら作業していました。
この記事では、麻薬帳簿の基本的な書き方を、フェントステープ0.5mgの具体的な記載例を使って解説します。
受入・払出・訂正の3つを中心に、薬局で実際に行っているダブルチェックの方法も紹介します。
麻薬帳簿とは?まず押さえておきたい基本ルール
麻薬帳簿は、薬局で取り扱う麻薬の受入・払出などを記録し、在庫を管理するための帳簿です。
麻薬及び向精神薬取締法第38条により、麻薬小売業者には帳簿の備付けと、受払・廃棄などに関する記録が義務付けられています。
基本的には、麻薬を譲り受けたり、処方箋に基づいて調剤したりした都度、帳簿に記載します。
麻薬帳簿は品名・剤形・規格ごとに分けて記載する
最初に覚えておきたいのが、麻薬帳簿は品名・剤形・規格別に管理するというルールです。
例えば、フェントステープ0.5mgとフェントステープ1mgは、同じフェントステープでも規格が異なるため、それぞれ別のページで管理します。
また、オキシコンチンTR錠5mgのように品名が異なる麻薬についても、別のページで管理します。

同じ規格の麻薬について受入・払出を記録し、そのページで残量を管理することで、帳簿と実在庫を照合しやすくなります。
なお、麻薬帳簿を必ず医薬品ごとに別冊にするという意味ではありません。
1冊の帳簿の中で、医薬品ごとにページを分けて管理する方法でも問題ありません。
麻薬帳簿に記載する主な項目
麻薬帳簿では、主に次の内容を記録します。
- 麻薬を受け入れた年月日と数量
- 麻薬を払い出した年月日と数量
- 受入・払出後の残量
- 麻薬を購入した卸売業者名
- 麻薬を交付した患者さんの氏名
- 受け入れた麻薬の製品番号
帳簿の様式は全国一律ではありません。
私の勤務する薬局では、左から「日付」「患者名または卸売業者名」「受入」「払出」「残量」「製品番号」の順に記載しています。
また、受入・払出・残量のそれぞれに確認印を押すための欄を設けています。
今回は、この形式を参考に記載例を紹介します。
※掲載する患者名・卸売業者名・製品番号・印影は、説明用の架空のものです。
麻薬帳簿の書き方①|麻薬を納品したときの受入記載例
まずは、麻薬卸売業者から麻薬を納品したときの書き方です。
今回は、フェントステープ0.5mgを例に考えてみましょう。
フェントステープ0.5mgは7枚入りの包装なので、通常の箱単位で2箱を購入した場合、受入数量は14枚になります。
例えば、次のような状況です。
【受入の例】
- 医薬品名:フェントステープ0.5mg
- 以前の受入:令和8年9月20日に7枚
- 今回の受入:令和8年10月1日に14枚
- 今回の受入前残量:7枚
- 今回の受入後残量:21枚
- 卸売業者名:〇〇薬品
- 製品番号:FT05-001(架空)

今回の受入数量は14枚なので、帳簿の「受入」欄には14と記載します。
受入前の残量が7枚であれば、受入後の残量は次のとおりです。
7枚+14枚=21枚
この21枚を「残量」欄に記載します。
また、今回の受入に対応する卸売業者名と製品番号も忘れずに記録します。
受入年月日は麻薬譲渡証の日付を記載する
麻薬卸売業者から麻薬を譲り受けた場合、帳簿の受入年月日には、麻薬譲渡証に記載された年月日を記載します。
通常は麻薬譲渡証の日付と実際の納品日が一致していることもありますが、両者が異なる場合には注意が必要です。
例えば、麻薬譲渡証の日付が10月1日で、実際の納品日が10月2日だった場合、帳簿の受入年月日は10月1日とし、備考欄に「10月2日納品」と記載します。
私の勤務する薬局では、麻薬譲渡証の日付と納品日を必ず一致させる運用にしているため、普段はこうした記載を行うことはありません。
ただし、日付が異なる場合の取り扱いも知っておくと、いざというときに迷わず対応できます。
製品番号と製造番号を混同しない
受入時には、麻薬譲渡証に記載された製品番号と現品を確認し、帳簿にも記録します。
ここでいう製品番号は、製造番号(ロット番号)とは異なります。
私の勤務する薬局でも、受入時には麻薬譲渡証と製品を照合したうえで、帳簿に製品番号を記載しています。
なお、麻薬譲渡証・譲受証の具体的な書き方や取り扱いについては、別の記事で解説する予定です。
麻薬帳簿の書き方②|麻薬を調剤したときの払出記載例
次は、麻薬処方箋に基づいて調剤したときの書き方です。
先ほどの受入記載例から続けて考えてみましょう。
令和8年10月1日時点で、フェントステープ0.5mgの残量は21枚でした。
その後、10月3日に患者Aさんへ7枚を調剤したとします。
【払出の例】
- 医薬品名:フェントステープ0.5mg
- 調剤日:令和8年10月3日
- 患者名:患者A(架空)
- 払出数量:7枚
- 払出前残量:21枚
- 払出後残量:14枚

帳簿の「払出」欄には7と記載します。
残量は、払出前の21枚から今回調剤した7枚を差し引いて計算します。
21枚-7枚=14枚
この14枚を「残量」欄に記載します。
また、患者さんの氏名も記録します。
払出日は処方箋の発行日ではなく調剤日
麻薬処方箋に基づく払出では、調剤した日を払出年月日として記載します。
例えば、処方箋が10月2日に発行され、10月3日に調剤した場合、帳簿上の払出日は10月3日です。
受入時には麻薬譲渡証の日付を使いますが、払出時には調剤日を使うため、それぞれ区別して覚えておきましょう。
払出数量だけでなく、残量も確認する
麻薬帳簿では、払出数量が合っていても、残量の計算を間違えてしまうことがあります。
また、帳簿上の数字が正しくても、実際に取り出した数量が違っていれば、帳簿と実在庫が一致しなくなります。
そのため、数量を記載するだけで終わらせず、実際に調剤した数量と帳簿上の残量を確認することが大切です。
麻薬帳簿の書き方③|記載を間違えたときの訂正方法
麻薬帳簿を記載していると、数字を書き間違えてしまうこともあります。
その場合は、元の記載を消して書き直すのではなく、間違った内容が判読できる状態で訂正します。
厚生労働省の「薬局における麻薬管理マニュアル」では、訂正する箇所を二本線などで抹消し、近くに正しい数字などを記載したうえで、管理者等の訂正印を押す方法が示されています。
例えば、本来は7枚を払い出したのに、誤って14枚と記載してしまった場合を考えてみましょう。
この場合、払出数量の14に二重線を引き、正しい数量である7を近くに記載します。
さらに、残量も誤って7枚と記載していた場合は、同様に訂正して正しい14枚に直します。

訂正するときには、次の点に注意しましょう。
- 間違った数字は二重線などで消し、元の内容が読めるようにする
- 正しい数字を近くに記載する
- 訂正箇所に管理者等の訂正印を押す
- 修正液や修正テープは使用しない
なお、これは記載内容を間違えた場合の訂正方法です。
帳簿の残量と実際の在庫が一致しない場合は、単に帳簿の数字を書き換えればよいわけではありません。
まずは調剤記録や受払の履歴などを確認し、原因を調べる必要があります。
麻薬帳簿の記載ミスを防ぐために行っていること
受払数量と残量をダブルチェックする
私の勤務する薬局では、麻薬帳簿への記載後、別の薬剤師が確認する仕組みにしています。
確認するのは、主に受入・払出数量と、その後の残量です。
帳簿には、それぞれ確認印を押すための欄を設けています。
記載内容を確認し、間違いがなければ、確認した薬剤師が「受入または払出」と「残量」の2か所に押印します。
これは、私の勤務する薬局で行っている管理上の工夫であり、すべての薬局に共通する法定の押印方法ではありません。
ただ、数量を誤って記載すると、後から帳簿と実在庫が合わなくなる原因にもなります。
記載した段階で別の薬剤師が確認することで、こうしたミスに早く気づけるようにしています。
新人時代は麻薬の調剤に30分以上かかることもあった
私も新人薬剤師だった頃は、麻薬の調剤にかなり時間がかかっていました。
麻薬帳簿の書き方にも慣れておらず、一つひとつの作業が本当に正しいのか不安で、その都度上司に確認してもらいながら進めていました。
当時は、麻薬の調剤から交付まで30分以上かかってしまうこともありました。
現在では経験を重ね、麻薬が複数処方されていたり、一包化や粉砕、疑義照会が必要だったりしなければ、比較的短時間で対応できるようになりました。
例えば、前回と同じ内容でフェントステープだけが処方されている場合なら、ダブルチェックを担当する薬剤師の手が空いていれば、5分程度で交付できることもあります。
もちろん、急いでいるからといって確認を省略しているわけではありません。
私の勤務する薬局では、患者情報や処方内容を確認して必要に応じて疑義照会を行い、その後、麻薬金庫からの取り出し、調剤、麻薬帳簿への記載、別の薬剤師によるダブルチェック、監査機での確認など、必要な工程を済ませてから交付しています。
どんなに忙しいときでも、麻薬帳簿の記載や確認を後回しにせず、交付前に済ませるようにしています。
一般の医薬品と比べて手間がかかる部分はありますが、作業に慣れることで、正確さを保ちながら効率よく対応できるようになります。
麻薬帳簿の記載に不慣れなうちは、時間がかかることもあると思います。
それでも、最初から速さを求める必要はありません。
まずは一つひとつの確認を確実に行い、経験を重ねながら慣れていくことが大切だと感じています。
麻薬帳簿についてよくある質問
麻薬帳簿は毎日記載しなければいけませんか?
麻薬の受入・払出などがあった都度、記載するのが原則です。
受払のなかった日に、毎日「取引なし」と記載する必要はありません。
ただし、帳簿上の残量と実際の在庫が一致しているか、日頃から適切に確認することが大切です。
麻薬帳簿は何年間保存する必要がありますか?
麻薬帳簿は、最終の記載日から2年間保存する必要があります。
新しい帳簿に切り替えた場合でも、古い帳簿をすぐに廃棄してよいわけではないので注意しましょう。
麻薬帳簿は手書きでなければいけませんか?
必ずしも手書きに限定されるわけではありません。
コンピュータによる帳簿管理も認められていますが、記録を適切に保存し、立入検査などの際に確認できるようにしておく必要があります。
厚生労働省のマニュアルでは、原則として定期的に出力した印刷物を整理し、提示できるようにする方法が示されています。
電子帳簿を導入する場合は、所管行政機関の指導なども確認しましょう。
コデインリン酸塩散1%も麻薬帳簿に記載する必要がありますか?
コデインリン酸塩散1%は「家庭麻薬」に分類され、麻薬及び向精神薬取締法上の麻薬としての規制対象ではないため、麻薬帳簿への記載は不要です。
一方、麻薬に該当する医薬品については、原則として受入・払出などの記録が必要です。
まとめ|麻薬帳簿は受入・払出・残量を正確に記録しよう

今回は、麻薬帳簿の基本的な書き方について、受入・払出・訂正の3つの記載例を使って解説しました。
麻薬帳簿を記載するときに覚えておきたいポイントは、次のとおりです。
- 麻薬帳簿は品名・剤形・規格ごとに分けて管理する
- 受入年月日は麻薬譲渡証に記載された日付を使用する
- 麻薬処方箋に基づく払出年月日は調剤日を記載する
- 受払数量と残量を確認し、実在庫との整合性を保つ
- 記載ミスは元の内容を残し、二重線・訂正印で訂正する
麻薬帳簿は、慣れないうちは記載するだけでも戸惑うことがあると思います。
私自身も、新人時代には何度も確認しながら作業していました。
ですが、基本的な記載方法を理解し、日頃から正確に記録する習慣をつければ、少しずつスムーズに対応できるようになります。
最初は時間がかかっても構いません。
大切なのは、焦って確認を省略するのではなく、一つひとつの作業を確実に行うことだと思います。
参考資料
※本記事は2026年10月時点で確認できる公的資料を参考にしています。
実務では最新の法令・通知や所管行政機関の手引を確認してください。

