患者さんやご家族から、
「余った麻薬を処分してほしい」
と薬局へ持ち込まれたとき、初めて対応する薬剤師は少し緊張するのではないでしょうか。
私自身、初めて調剤済麻薬を廃棄したのは、薬剤師になって2年目くらいのころでした。
薬剤師国家試験でも、調剤済麻薬の廃棄については勉強します。
「調剤済麻薬を廃棄した場合は、30日以内に届け出る」
ここまでは覚えていました。
ところが、いざ実際に患者さんが亡くなられ、ご家族から残った麻薬を返却されたとき、
「具体的にどうやって廃棄するんだろう?」
「回収困難な方法って、どこまでやればいい?」
「届出書はどこから入手する?」
「これで本当に合っているのかな?」
と、一気に不安になったのを覚えています。
調剤済麻薬の廃棄は、薬剤師なら経験する可能性がある一方、勤務先によっては何年働いていてもなかなか経験しない業務です。
この記事では、初めて調剤済麻薬を廃棄する薬剤師や、廃棄・届出の手順に自信がない薬剤師に向けて、薬局での基本的な流れを整理します。
制度を知っていても、実際に自分で廃棄するとなると少し緊張するものです。
ただ、一つずつ確認して進めれば、必要以上に怖がるような手続きではありません。
※この記事は2026年9月時点の公的情報をもとに作成しています。届出先や様式、具体的な廃棄方法については、実際に業務を行う際に勤務先所在地を管轄する都道府県・保健所等の最新情報も確認してください。
まず結論|調剤済麻薬の廃棄はこの流れで考える
患者さんやご家族から返却された調剤済麻薬を薬局で廃棄する場合、まずは次の流れを押さえておくと分かりやすいです。
- 返却されたものが「調剤済麻薬」に該当するか確認する
- 品名・数量などを確認する
- 適切な立会いのもとで廃棄する
- 麻薬を回収することが困難な方法で処理する
- 麻薬帳簿または廃棄用の補助簿に記録する
- 廃棄後30日以内に「調剤済麻薬廃棄届」を提出する
厚生労働省の麻薬管理マニュアルでは、麻薬処方せんによって調剤された麻薬を廃棄した場合、廃棄後30日以内に「調剤済麻薬廃棄届」を提出することとされています。
また、廃棄した内容は麻薬帳簿に記載するか、廃棄用の補助簿を作成して記録する必要があります。
ここで最初に注意したいのが、
「麻薬を廃棄する=すべて同じ手続き」ではない
ということです。
最初に「調剤済麻薬」なのかを確認する
今回の記事で扱うのは、麻薬処方せんによって調剤され、患者さんへ交付されたあとに不要となった麻薬です。
薬局で想定されるのは、
- 処方変更などで不要になった麻薬
- 患者さんが服用できなくなって残った麻薬
- 患者さんが亡くなり、ご家族から返却された麻薬
といったケースです。
私の薬局でも、実際に経験することが多いのは、患者さんが亡くなられたあと、ご家族が残った麻薬を持ってこられるケースです。
そのような場合には、まず薬の種類や数量を確認し、調剤済麻薬として適切に処理していきます。
「調剤済麻薬」と「それ以外の麻薬」は廃棄手続きが違う
ここは特に間違えたくないポイントです。
調剤済麻薬の廃棄と、それ以外の麻薬の廃棄では手続きが異なります。
たとえば、
- 古くなった麻薬
- 変質して使用できなくなった麻薬
- 調剤過誤によって使用できなくなった麻薬
などを廃棄する場合は、原則としてあらかじめ「麻薬廃棄届」を提出し、麻薬取締員等の指示に従って廃棄します。
一方、麻薬処方せんによって調剤され、患者さんへ交付されたあとに不要となった麻薬については、適切な方法で廃棄し、廃棄後30日以内に「調剤済麻薬廃棄届」を提出するという流れです。
整理すると、
- 麻薬廃棄届:原則として廃棄前に届出
- 調剤済麻薬廃棄届:廃棄後30日以内に届出
という違いがあります。
名前が似ているので混同しやすいのですが、
「その麻薬がなぜ廃棄することになったのか」
を最初に確認すると判断しやすくなります。
調剤済麻薬は誰が廃棄する?
患者さんやご家族から返却された調剤済麻薬について、厚生労働省の麻薬管理マニュアルでは、
麻薬小売業者(薬局開設者)自ら、もしくは管理薬剤師が、他の薬剤師または職員の立会いのもとで廃棄する
こととされています。
私の薬局では、私と管理薬剤師の2人で、品名や数量を確認しながら廃棄しています。
医療用麻薬というだけで少し身構えてしまいますが、複数人で確認しながら進めることで、数量の取り違えや記録ミスにも気付きやすくなります。
以前、調剤済麻薬の廃棄を初めて経験する薬剤師に実際に対応してもらったことがあります。
やはりかなり緊張していて、
「これで大丈夫ですか?」
と何度も確認していました。
その姿を見て、自分が初めて廃棄したときも同じだったなと思いました。
麻薬は厳重な管理が必要だからこそ、慎重になること自体は悪いことではありません。
ただ、
必要な手順を理解したうえで慎重に対応することと、分からないまま必要以上に怖がることは別です。
一度きちんと経験して流れを理解すると、次からはかなり落ち着いて対応できるようになります。
「回収困難な方法で廃棄する」とは?
調剤済麻薬は、そのままゴミ箱へ捨ててよいわけではありません。
麻薬処方せんにより調剤された麻薬を廃棄するときは、焼却その他の麻薬を回収することが困難な方法で行うこととされています。
厚生労働省の麻薬管理マニュアルでは、
- 焼却
- 放流
- 酸・アルカリによる分解
- 希釈
- 他の薬剤との混合
などが例として挙げられています。
ただ、私が最初に対応したころ一番困ったのが、
「回収困難な方法って、具体的にどう処理すればいいの?」
という点でした。
法律やマニュアルで「回収困難な方法」と書かれていても、実際に目の前にある製剤をどう処理するのかまでは、なかなかイメージできません。
具体的な廃棄方法は東京都の「医療用麻薬廃棄方法推奨例一覧」が参考になる
そこで私が現在参考にしているのが、東京都保健医療局が公開している「医療用麻薬廃棄方法推奨例一覧」です。
この資料では、医療用麻薬について、品目ごとに具体的な廃棄方法の例がまとめられています。
薬局で、
「この製剤は具体的にどう処理すればいいんだろう?」
と迷ったときに、かなり参考になります。
製剤によって、
- 水などを用いて処理するもの
- 細断して処理するもの
- 他の薬剤等と混合するもの
など、推奨される方法が異なります。
そのため、「麻薬だから全部同じ方法で廃棄すればいい」と考えないことが大切です。
特に初めて扱う製剤であれば、剤形だけで判断せず、品目名まで確認して適切な方法を調べるようにしています。
東京都保健医療局の「医療用麻薬廃棄方法」のページから、「医療用麻薬廃棄方法推奨例一覧」を確認できます。
東京都の資料を参考にするときも、勤務先の自治体ルールを確認する
東京都の「医療用麻薬廃棄方法推奨例一覧」は具体的で分かりやすく、私も参考にしています。
以下のリンクから確認することができます。
ただし、全国どこでもそのまま同じ方法で処理してよいとは限りません。
廃棄物については、
- 廃棄物処理法
- 水質汚濁防止法
- 下水道法
などによる規制があります。
さらに東京都保健医療局も、自治体によって独自の排出基準等が定められている場合があるため、地域の排出規制を確認したうえで適正に廃棄するよう案内しています。
そのため実務では、
東京都の推奨例を参考にしつつ、勤務先所在地を管轄する自治体のルールも確認する
という使い方がよいと思います。
判断に迷った場合は、自己判断で処理せず、勤務先を管轄する都道府県の薬務担当部署や保健所等へ確認するのが確実です。
廃棄したら麻薬帳簿などへの記録も忘れない
調剤済麻薬は、廃棄したら終わりではありません。
厚生労働省の麻薬管理マニュアルでは、調剤済麻薬を廃棄した場合、
麻薬帳簿にその旨を記載するか、廃棄用の補助簿を作成して記録する
必要があるとされています。
実際に廃棄すると、その作業そのものに意識が向きやすいので、
「無事捨てられた。終わった」
となりそうですが、記録と届出までが一連の業務です。
私は、
- 何を廃棄したか
- どれくらい廃棄したか
- いつ廃棄したか
- 必要な記録をしたか
- 届出が必要であること
までをセットで考えるようにしています。
特に調剤済麻薬廃棄届は廃棄後に提出するため、その場で提出まで終わるわけではありません。
廃棄した時点で、
「次は届出」
まで意識しておくと忘れにくくなります。
調剤済麻薬廃棄届は「廃棄後30日以内」
調剤済麻薬を廃棄した場合は、廃棄後30日以内に「調剤済麻薬廃棄届」を提出します。
厚生労働省の麻薬管理マニュアルでも、麻薬処方せんにより調剤された麻薬を廃棄した場合は、廃棄後30日以内に都道府県知事へ届け出ることとされています。
届出には別記第19号様式「調剤済麻薬廃棄届」が用いられます。
厚生労働省の「薬事関係法令に係る行政手続について」のページでは、調剤済麻薬廃棄届のWord・PDF様式を確認できます。
また、都道府県等のホームページでも届出様式が公開されていることがあります。
私も実際に届出を行う際は、勤務先を管轄する自治体のホームページから様式や提出方法を確認しています。
初めて対応したころは、
「こういう書類って薬局に決まった用紙が置いてあるのかな?」
というところから分かりませんでした。
今ならまず、
「勤務先の都道府県名+調剤済麻薬廃棄届」
などで自治体の公式サイトを確認します。
様式だけでなく、提出先や提出方法についても一緒に確認しておくと安心です。
30日以内であれば複数回分をまとめて届け出ることもできる
調剤済麻薬を廃棄するたびに、必ずその日のうちに1枚ずつ届出書を提出しなければならないわけではありません。
厚生労働省の麻薬管理マニュアルでは、30日以内であれば、その間に行った複数回の廃棄をまとめて一つの届出書で提出しても差し支えないとされています。
ただし、まとめて提出しようとして30日を過ぎてしまっては意味がありません。
薬局内で、
- 誰が届出を作成するのか
- どこに提出するのか
- いつまでに提出するのか
を確認しておくと安心です。
廃棄だけ経験して終わるのではなく、記録と届出まで含めて一連の業務として覚えることが大切だと思います。
国家試験では知っていても、実務では分からないことが多かった
私が最初に調剤済麻薬を廃棄したとき、一番不安だったのは、
「これで本当に合っているのかな?」
ということでした。
国家試験では、
「調剤済麻薬を廃棄した場合は30日以内に届出」
という知識を覚えます。
試験問題なら、それで正解できます。
でも実際の薬局では、
患者さんやご家族から麻薬を受け取り、
品名と数量を確認して、
具体的な廃棄方法を調べ、
立会いのもとで処理し、
帳簿などに記録して、
届出書を探して記載し、
行政へ提出する。
ここまでやって、ようやく一連の業務が終わります。
私は最初のころ、資料を調べたり、他店舗の薬剤師に聞いたりしながら、
「たぶんこれで大丈夫なはず……」
と心配しながら対応していました。
薬剤師歴が長くても、勤務先によっては調剤済麻薬の廃棄を一度も経験していないこともあると思います。
だから、初めて担当するときに分からないことがあるのは不思議ではありません。
大切なのは、分からないまま感覚で処理せず、公的資料を確認しながら正しい手順で進めることです。
初めて調剤済麻薬を廃棄するときのチェックポイント
初めて対応するときは、次の項目を順番に確認すると整理しやすいと思います。
- その麻薬は「調剤済麻薬」に該当するか
- 品名と数量を確認したか
- 薬局開設者または管理薬剤師と、立会者を含めた適切な体制になっているか
- その製剤に適した回収困難な廃棄方法を確認したか
- 勤務先所在地の廃棄物に関するルールに問題がないか
- 麻薬帳簿または補助簿に記録したか
- 調剤済麻薬廃棄届を作成したか
- 廃棄後30日以内に提出できるか
最初から全部を暗記しておく必要はありません。
むしろ実務では、
「何を確認しなければならないか」を知っていて、必要なときに正しい資料へたどり着けること
のほうが大切だと思っています。
よくある疑問
患者さんが亡くなり、ご家族から返却された麻薬も調剤済麻薬廃棄届の対象?
麻薬処方せんによって患者さんへ交付され、その後、死亡などによって不要となり遺族等から返却された麻薬は、今回説明した調剤済麻薬の廃棄手続きの対象になります。
適切に廃棄し、廃棄後30日以内に「調剤済麻薬廃棄届」を提出します。
廃棄する前に「麻薬廃棄届」を出す必要はある?
患者さんへ交付されたあとに返却された調剤済麻薬については、原則として事前の「麻薬廃棄届」ではなく、適切に廃棄したあと30日以内に「調剤済麻薬廃棄届」を提出します。
一方、古くなった在庫や変質した麻薬、調剤過誤によって使用できなくなった麻薬などでは手続きが異なります。
この2つは名前が似ているため、混同しないよう注意が必要です。
調剤済麻薬なら、そのままゴミとして捨ててもいい?
そのまま捨てるのではなく、麻薬を回収することが困難な方法で処理する必要があります。
具体的な方法は製剤によって異なるため、東京都保健医療局が公開している「医療用麻薬廃棄方法推奨例一覧」などを確認すると参考になります。
具体的な廃棄方法が分からない場合は?
まず、勤務先所在地を管轄する都道府県や保健所等の公式情報を確認します。
製剤ごとの具体的な廃棄方法については、東京都保健医療局の「医療用麻薬廃棄方法推奨例一覧」も参考になります。
それでも判断できない場合は、無理に自己判断せず、廃棄する前に管轄する行政機関へ確認するのが確実です。
調剤済麻薬廃棄届の用紙はどこでもらう?
厚生労働省では、別記第19号様式「調剤済麻薬廃棄届」をWord・PDF形式で公開しています。
また、各都道府県等でも様式や提出方法が案内されていることがあります。
実際に提出するときは、勤務先所在地を管轄する自治体の公式サイトで、最新の様式・提出先・提出方法まで確認することをおすすめします。
まとめ|調剤済麻薬の廃棄は、流れを知れば必要以上に怖くない

調剤済麻薬の廃棄は、初めて経験すると緊張する業務の一つだと思います。
医療用麻薬は厳重な管理が必要なので、
「間違えたらどうしよう」
と慎重になるのは自然なことです。
私自身、初めて対応したときは、本当にこれで合っているのか不安になりながら、資料を調べたり周囲に確認したりしていました。
ただ、基本的な流れは、
調剤済麻薬に該当するか確認する
→適切な方法で廃棄する
→帳簿などに記録する
→廃棄後30日以内に調剤済麻薬廃棄届を提出する
というものです。
そして特に覚えておきたいのが、調剤済麻薬と、それ以外の麻薬では廃棄手続きが異なることです。
ここを混同せず、分からないところは公的資料を確認しながら一つずつ進めれば、決して難しすぎる業務ではありません。
薬剤師歴に関係なく、初めて経験する業務は不安になるものです。
必要な緊張感は持ちつつも、過度に怖がらず、正しく廃棄して、記録と届出まで忘れずに終えられるようになってもらえたらと思います。
参考資料
この記事の作成にあたり、以下の公的資料を参考にしています。
調剤済麻薬の廃棄方法や届出様式、提出方法などは、今後変更される可能性があります。
実際に廃棄・届出を行う際は、厚生労働省などの公的資料に加えて、勤務先所在地を管轄する都道府県・保健所等の最新情報も確認してください。

