薬局での切ない出来事

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みなさんこんにちは。りつです。

今回は薬局でのちょっと切ないなと思った出来事について記事にしました。

みなさんも経験があるかもしれません。

 

目次

たくさんお話してくれるおばあちゃん、早く帰りたい家族

ある日の夜間、Aさんという患者さんが来局されました。

Aさんは88歳女性で、以下のような1剤だけのシンプルな内容の処方箋を差し出しました。

 

カロナール錠300mg 3錠

1日3回 毎食後 14日分

前回(約2ヶ月前)

カロナール錠500mg 3錠

1日3回 毎食後 7日分

 

お薬手帳には△△病院から以下のような薬が処方中でした。

  • ウルソデオキシコール酸100mg
  • リックル配合顆粒

 

見た瞬間に「これは・・・気をつけないと」と思いました。

既往歴にもC型肝炎とありましたので、患者さんにできるだけ詳しく聞き取ることにしました。

 

Aさんは、C型肝炎で治療されてらっしゃるのでしたね。
かかりつけの○○病院さんでは、先生から肝臓の数値が上がってるなど注意を受けたりすることはありましたか?

患者さん

そうなの。
C型肝炎になってから、もう60年になるかしら。
肝臓の薬は2つ飲んでいるけど、おかげさまで体調が悪くなったりとかはないし、△△病院の先生からは血液検査の結果も問題なさそうだねと言われているわね。

(C型肝炎に)かかられてからそんなに経つのですね。
でも検査で悪い数値になっていないのは何よりですね。

患者さん

そうねえ。
この病気で急に体調が悪くなったりってこともなかったし、長く生きられたことは幸せなことよね。
今年、みんなから米寿(88歳)のお祝いをしてもらったのよ。

おめでたい年でしたね。
でもまだまだこれからも元気にお過ごしいただかないとですね。

患者さん

あまり年ばっかり取ってもいいものじゃないけどね(笑)
前に来た時も頭痛で薬をもらったと思うけど、やっぱりまだ週に何回かは頭が痛くなることがあるのよね。

前回はちょっと多めの量で痛み止めが処方されていましたね。
でも今回は前より少し量が少なくなっていますね。

患者さん

実は前回の薬は夜1回しか飲んでいなかったのよね。
今日、○○病院の先生に正直に話したら、
「できれば日中も飲んでいた方がいいと思うよ」
と言われて1回の量を減らすような説明をされたわね。

本当は△△病院の先生も、
「他から薬もらって飲んじゃダメだよ」
と言われていたけど、これも正直に話したらそれくらいならいいよと言われていたわ。

このカロナールという薬は肝臓が弱っている方には少し使いにくい薬ですからね。
先生も承知で処方されているとは思いますが、念のためこのままの処方で良いか確認しますね。

患者さん

お手数かけるわね。
お願いします。

とんでもないです~。

 

※だいぶ省略はしていますが、ここまでの患者さんの聞き取り(かなり雑談多め)で10分程かかっています。

昔の話、世間話などとってもお話の好きな患者さんでした。

C型肝炎になるまで、その後の経過など詳しくお話をいただきました。

20代のある時、肝臓のマーカーが高く出たため肝がんを疑われ、手術により肝臓の1/4が切除されたとのこと。

しかし、その後がんではなかったことが判明。

検査の結果、C型肝炎と診断を受けたようです。

20代で出産をした際に出血がひどく、輸血をされた時にC型肝炎にかかってしまったようです。

肝臓の一部を切除されてしまったのですが、C型肝炎の診断に変わったのでがん保険はおりなかったと悲しそうに話していました。

60年前ともなると、切らないとわからないような感じだったのでしょうか・・・。恐ろしいです。

現在もがんマーカーだけでの確定診断はできませんが、生検などもあり、誤診は少なくなったのではないかと思います。

 

疑義照会の上、処方医からは今回はこのまま処方して経過をみたいとご回答いただきました。

 

Aさんお待たせ致しました。
先生からは問題ないということでしたので、お薬お出ししますね。

 

処方箋を受け付けてから15分程が経過して服用方法の説明が終わった頃、

ご家族

まだ時間かかるの?!
早く薬もらって帰るよ!!!!

お時間かかってしまい、申し訳ありません。

ご家族

薬1個だけなんだから、普通そんなに時間かかんないでしょ。

患者さん

でも、まだ・・・。

ご家族

今ここで話さなくていいことでしょ!
病院の先生に次話せばいいことなの!!

 

Aさんはまだお話したかったようでしたが、ご家族がそれを厳しく制止し、ご立腹の様子で足早に会計を済ませて去っていきました。

来局されたご家族は○○病院の事務員なので、薬局事情にもご理解のある方であるはずと思っていました。

しかし実際の所、薬局は早く薬を出して当たり前と思っているようです。

少し悲しいなと思った出来事でした。

 

※前回はカロナール錠500mg 3錠/日での処方で、相沢さんが調剤していました。

C型肝炎の既往を聞き取っていただけで疑義照会の形跡はなかったです。

(うーん。正直、Aさんが何ともなくて良かったです・・・。)

後から分かりましたが、前回も時間がかかってご家族にお叱りを受けていたようです。

やはり「薬局は薬を出すだけの場所」と思われている方も少なからずいらっしゃるのかなと思った出来事でした。

 

理想と現実

個人的なことですが、私は人の話を遮ったり、話している途中で話をさらっていったり、早々に切り上げたりするような人が苦手です。

なんなら食い気味に返事をされたりすること自体もあまりいい気はしません・・・。

逆に、自分がそのような対応を取るような人にならないようにしようと常々思っています。

 

しかしながら、薬局は効率を考えて動かないと業務が終わりません。

でも患者さんとの話は大切にしたい。

そのため自分ができる最大限、効率よく調剤・鑑査をして、患者さんとのお話はある程度時間を確保できるように心がけています。

患者さん1人あたりにかけられる時間を平均15分とすると、10分はお話・聞き取りにかける時間、それ以外は5分で終わらせてしまうようなイメージです。

一包化・粉砕・麻薬の調剤、疑義照会をする必要がある場合など、現実的にはもっと時間がかかってしまう人も出てくることは言わずもがなですが。

 

全く薬・治療と関係ないような話でも、気さくに話して下さる患者さんは私は好きです。

以前、約1時間ひたすらしゃべり続けるマダムもいらっしゃいました(他に患者さんが誰もいない時でしたが)。

ここまでいくとさすがに疲れてしまうので、少し手加減いただきたいです💦

ご年配の方は特にお話が好きな方が多いのですが、10分以上話しているとご家族が周りに悪いと思って、

ご家族

あんまり薬剤師さんに迷惑かけちゃだめだから、そろそろ帰ろうね。

と遠慮がちに話を切り上げることがあります。

その場合、たいてい患者さんは少し残念そうな、寂しそうな表情をされるため、

お気遣いさせてしまい、申し訳ありません。
でも今日はたくさんお話聞かせていただいてありがとうございます。
また○○さんのお話を聞かせて下さいね。

というようにお声がけしています。

時間がいくらでもあればずっとお話していたいんですけどね(ノД`)・゜・。

 

母の忠告

私の母は、薬剤師でも医療系とも全然関係ない職種の人です。

当然私より長く生きているため人生経験は豊富です。

私が仕事から帰って「今日、こういう患者さんがいたんだけど・・・。」と話すと(もちろん実名、年齢、処方された薬など個人情報が特定できそうなことは全て伏せています)、母からは、

人に依存し過ぎない方がいいよ。
家族だってそうだけど、人はどこまでいっても自分以外は他人なんだよ。

よくこういう風に諭されます。

ちょっと傷ついた時に聞くと、多少心が軽くなります。

 

この母の言葉は私は半分正しくて、でも半分はそうではないと信じたいと思っています。

人類みなきょうだいとまではいかなくても、人とのつながりは大事だと思いたいのです。

時に裏切られて傷ついても、死ぬときまで人を信じて生きていけたら幸せなことだと思います。

きれいごとかもしれませんが、私はそういう風に生きたいです。

傷ついて、落ち込んで、それでも優しい患者さんと出会って・・・それが今の私を作っているのですから。

 

うちの母と上司は考え方が似ているので面白いです。

上司は人の扱いが上手いですが、時に優しく、時に冷静・むしろ冷淡と言えるほど無機質な時があります。

1人1人の患者さんに対しての接し方に差があまりないという点では見習わないといけないと思います。

 

おわりに

いかがでしたか?

こういった経験・ジレンマなどに悩む方は私だけではないと思います。

みんなが納得する世の中はあり得ないですが、落としどころを見つけられれば良いですね。

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

次回の記事もお読みいただけると嬉しいです。

それでは。

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