こんにちは、りつです!
薬はこの世の中にたくさんありますよね。
分類として、先発医薬品(以下、先発品)と後発医薬品(以下、GE)があるのはご存じのことと思います。
ただ、薬には隠された名前があるのです・・・。
今回はそんな薬の名前についてのお話をしていきたいと思います。
薬の名前は3つある
薬は日本で薬価収載されているものだけで、ざっくり15,000品目もあります。
とても多いですよね。
ただこの薬たち、同じ成分なのに「1つの薬につき1つの名前」とはならないのです。
一般の方からすると「ん?どういうこと?」となりますよね。
薬には「化学名」「一般名(成分名)」「商品名」という3種類の名前があります。
1つずつ見ていきましょう。
化学名
化学名は物質の構造を正確に表したものです。
有機化学が得意な方であれば、化学名を見ただけで構造式を自分で書けますね。
ただ化学名は構造が複雑になればなるほどすごく長くなります💦
例えばサムスカ(トルバプタン)という薬では、
N-{4-[(5RS)-7-Chloro-5-hydroxy-2,3,4,5-tetrahydro-1H-benzo[b]azepine-1-carbonyl]-3-methylphenyl}-2-methylbenzamide
となります。
もはや暗号のようですね😅
この化学名は、添付文書・インタビューフォームに載っていますが、普段あまり目にしません。
そもそも薬局の業務ではほとんど使いませんね(笑)
一般名(成分名)
一般名は薬の有効成分を分かりやすく表したものです。
先ほども少し述べましたが、化学名では名前がすごく長くなりやすく、また一目で薬効が分かりにくいので、普段使いにはあまり向いていません。
そのため、普段よく使われるのはこちらの一般名になります。
ちなみに一般名は英語表記では「Generic name」となります。
ジェネリック医薬品というのはここからきています。
商品名
商品名は製薬メーカーが自社で作った薬に対して(ほぼ)自由につける名前です。
先発品では既存薬と類似した名前は避ける傾向にあるようですが、基本的に自由に名前をつけます。
昔はGEもオリジナリティのある商品名をつけられていたようです。
ラミアンなどがありましたね。(※現在ではシンバスタチンと変更されています)
近年では医療事故防止対策のため、GEは「一般名+屋号(メーカー名)」というような名前のつけ方になりました。
商品名は製薬メーカーの願いが込められたものがあります。
例えばカロナール(アセトアミノフェン)では、
「熱や痛みが取れて軽く、楽になる」というのが由来のようです。
かるくらくになーる→かるなーる→カロナール・・・
ちょっとダジャレっぽいですが、分かりやすいですね(笑)
また薬によっては先発品でも併売品があることもあります。
その場合、A社では○○、B社では△△というように違う名前をつけることになります。
一物二名称と呼ばれるものですね。
ノルバスクとアムロジンなどがその例となります。
まとめるとこんな感じです。
化学名 | 一般名 | 商品名 | |
---|---|---|---|
薬効の分かりやすさ | ✕ | 〇 | △(メーカーによる) |
名前の長さ | 長い | 短い | 短い |
名前の数 | 1つ | 1つ | 1~2つ |
ステムについて
皆さんは「ステム」というものをご存じでしょうか?
私は学生時代に薬物動態学の講義で学んだ記憶があります。
でも上司は学生時代に習わなかったそうです。
2年目の西野さん、1年目の相沢さんはしっかり習ってきているようです。
講義で取り上げられるようになったのは、薬学部が6年制になってからなのでしょうか?
ステム(Stem)は「幹、軸、茎」と訳されますが、薬の一般名においても幹となる部分になります。
これの何が良いかというと、ステムが同じ=共通した薬効をもつ薬だということが一目でわかる点です。
インタビューフォームにもちゃんとステムが記載されています。
例えばサムスカを見てみると
この「~バプタン」というところがステムですね。
今後もし同じ作用機序の薬が発売されるようになったとしたら、○○バプタンとなります。
一度ステムを覚えればかなり楽になりますね。
ただ、ステムはおおまかな薬効グループがわかるというだけなので注意が必要です。
複数ある受容体への選択性の強弱、他の部位への作用の有無・・・などなど同じ薬効グループの薬でも特徴的な作用を持つものもあります。
ステムだけでその詳細がわかるわけではないので、かなり詳しく知りたいという場合は添付文書やインタビューフォーム等を参照しなければなりません。
特徴的な名前の薬
よく上司は
「最近はGEがたくさん増えていて、何の薬かわかんない!」
「この○○の先発品ってなんて名前?」
とよく言ってきます。
先発品では名前から薬効が推測できないものが多いので、個人的にはGEの方がわかりやすいですけどね😅
ただ、中には先発品でも薬効がわかりやすい薬もあります。
スーグラ(一般名:イプラグリフロジンL-プロリン)などがその例ですね。
この薬はSGLT2阻害薬なので、その頭文字S、G、L、Tを取ってスーグラ(Suglat)と名付けられたようです。
とてもわかりやすい!
個人的にそういう薬はとても好きです😊
ただ先発品では、似たような名前をつけると医療事故の原因にもなりかねませんので、薬効をもじって名前をつけるのは基本的に1社くらいではないでしょうか。
他のSGLT2阻害薬みてみると、
ルセフィ(ルセオグリフロジン)ではLuseogliflozin+fine=Lusefiと命名されたようです。
ちなみにラテン語で「光り輝く」を意味する「Luceo」に由来しているようです。
名前から薬効は分かりにくいですが、この名前のつけ方も一概に悪いとは思いません。
というのも、名前を覚えやすいという点があるためです。
商品名ルセフィと一般名ルセオグリフロジンでは、頭文字2文字のルセが共通していますよね。
そのため今後GEが発売された後に、
「ルセフィのGEって何だっけ?」
「ルセオグリフロジンの先発ってなんだっけ?」
となることは少なくなるのではないでしょうか。
上司もこういう薬だと安心かと思います(笑)
また薬の中にはかわいい名前のものあります。
コムタン(一般名:エンタカポン)がその筆頭でしょうか。
この薬の名前も作用機序である、COMT阻害から由来しているものなのでわかりやすいですね。
他にもリリカ(プレガバリン)、クラリス(クラリスロマイシン)など個人的にですが、かわいいと思う名前の薬があります。
以前、患者さんから
「このクラリスちゃん、前に病院から出されて飲んだことがあるよ」
とお話をされたことがありました。
クラリス・・・ちゃん?
患者さんにとっても愛嬌のある名前の薬は印象に残るようですね。
おわりに
いかがでしたでしょうか?
正直、学生時代は薬の名前を覚えるのが大変だったので
「薬に何個も名前つけないでよー💦」
と思っていました。
ただ薬の名前にも意味がありますし、そして必要なものです。
化学名まで覚えるのはさすがに厳しいですけどね😅
商品名に関しても名前の由来を調べると面白い発見がありますので、今後も注目して見ていきたいと思います。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回の記事もお読みいただけると嬉しいです。