【書評】52ヘルツのクジラたち／町田そのこ

今回は町田そのこさんの「52ヘルツのクジラたち」の書評です。

2021年本屋大賞第１位の人気作品です。

文庫化特典で町田そのこさんの書き下ろし小説付きとなっています。

　

本書の概要

　

あらすじ

自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。

孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれる――。

中央公論新社より引用

　

感想

タイトルにある「52ヘルツのクジラ」とは、世界で一番孤独だと言われているクジラのことです。

なぜなら、他のクジラとは声の周波数が違うため、仲間に自分の声が届かないためです。

本書では自分の心の叫びが届かず、苦しみながら生きている人たちが登場します。

そんな人たちを「52ヘルツのクジラたち」と表現されています。

　

主人公・キナコ（本名：貴瑚）の過去はあまりにもつらいものでした。

家族からの虐待を受けていたばかりか、ヤングケアラーとして人生を搾取されていて、目をそむけたくなるような場面もありました。

地獄のような日々を送るキナコでしたが、ある時、アンさんという見ず知らずの人物に助けられ、第２の人生を歩むことになります。

このアンさんが残した「魂の番」という言葉が特に心に残りました。

「愛を注ぎ注がれるような、たったひとりの魂の番のようなひとときっと出会える」

と作中でキナコに語りかけています。

どんなに孤独でつらくても、魂の番となる人と出会って幸せになれるんだと言うことを、読者にも教えてくれているようで素敵だなと感じました。

やがて過去を捨て、単身で新天地へ赴いたキナコでしたが、同じような境遇の少年（後に52とあだ名をつけられます）と出会い、お互いを知り、絆を深めていく所に心が温まりました。

　

総合評価

264ページで難しい表現も少ないので、さらっと読めてしまうと思います。

序盤の明るい感じから、徐々に暗い過去・意外な出来事が明らかになっていくことに驚きました。

キナコと52には試練が待ち受けていますが、幸せな未来を勝ち取るために進んでいく場面に感動しました。

　

おすすめする読者層

18歳〜30代に特におすすめです。

難しい表現が少なく10代でも普通に読める本ではありますが、一部の性描写・凄惨な場面もあるためこの年代をおすすめとしました。

また、児童虐待・ヤングケアラー・LGBTQなどの性的マイノリティなどの社会的問題が題材となっています。

過去・現在に苦しみや葛藤を持って生きている人にとってエールをもらえる本なので、人生がつらいと感じている人にもおすすめしたい１冊です。

　　

まとめ

町田そのこさんの「52ヘルツのクジラたち」の書評でした。

2024年に映画化されており、キナコ役を杉咲花さん、アンさん役を志尊淳さんが演じています。

気になる方はこちらもチェックしていただければと思います。

社会的問題に切り込んだ作品であり、多くの人にぜひ読んでいただきたい１冊です。

　

　

今回の記事も最後までお読みいただきありがとうございました。

また次回の記事もお読みいただけると嬉しいです。

それでは。