「花屋さんだった人が今は薬剤師として活躍している」「元塾講師が薬局で服薬指導をしている」——こんな話を聞くと驚きませんか?
実は日本では、さまざまな職種からキャリアチェンジして薬剤師になる人が増えています。
特に30〜40代の社会人が、安定性や社会貢献度の高さから薬剤師を目指すケースが注目されています。
コロナ禍をきっかけにした働き方の見直しや、高齢化社会における医療職の需要増加を背景に、異業種から薬学の道に挑戦する人々が増えているのです。
この記事では、元花屋さんや塾講師、看護師など、意外な経歴から薬剤師になった7つの成功事例を紹介します。
キャリアチェンジを考えているあなたに、新たな一歩を踏み出す勇気をお届けします!
なぜ薬剤師が人気?異業種からの転職が注目される理由
異業種から薬剤師を目指す人が増えている背景には、さまざまな理由があります。
特に30〜40代の社会人にとって、薬剤師という職業には多くの魅力があるのです。
安定した収入と将来性
薬剤師は国家資格を持つ専門職であり、高齢化社会において需要が安定しています。
医療職として欠かせない存在であるため、景気に左右されにくく、長期的なキャリア形成が可能です。
年収は経験や勤務先によって異なりますが、一般的に400〜600万円程度と安定しています。
また薬剤師が不足している僻地での就職、管理薬剤師となった場合などはさらに高い年収が期待できます。
過去の経験が活かせる
一見すると全く関係のない職種に思えても、異業種での経験は薬剤師の仕事に意外と活かせます。
接客業での対人スキル、教育職での指導力、クリエイティブ職での表現力など、これまで培ってきた能力が、患者さんとのコミュニケーションや服薬指導に役立つのです。
社会貢献度の高さ
薬剤師は人々の健康を直接サポートする仕事です。
患者さんの症状改善や健康維持に貢献できる喜びは、多くの転職者が挙げる魅力の一つです。
「もっと直接的に人の役に立ちたい」という思いが、異業種から薬剤師を目指す大きな動機となっています。
多様な働き方の選択肢
調剤薬局、病院、ドラッグストア、製薬会社など、活躍の場は多岐にわたります。
ライフステージに合わせて働き方を選べる柔軟性も、キャリアチェンジを考える社会人にとって大きな魅力です。
成功事例7選:異業種から薬剤師になった人々のストーリー
事例1:元花屋から漢方薬局の薬剤師へ
30代半ばのAさんは、10年間花屋として働いていました。
ハーブや植物に親しむ中で薬用植物に興味を持ち、自然の力で人々の健康をサポートする仕事に魅力を感じるようになりました。
「花々の香りや色が人の心を癒すように、植物の力で体の健康も支えたい」という思いから、35歳で薬学部に入学。
ハーブや生薬に関する知識は、薬学の勉強でも大いに役立ちました。
卒業後は漢方薬局で薬剤師として働き、植物や自然に関する豊富な知識を活かして患者さんに適した漢方薬を提案しています。
花屋時代の接客経験も活かし、温かみのある対応で地域の人々から信頼を集めています。
「異業種だったからこそ、薬剤師という仕事に新しい視点を持ち込めた」とAさんは語ります。
事例2:元塾講師からドラッグストアの薬剤師へ
Bさんは高校生に化学や生物を教える塾講師でした。
生徒たちの成長を見守る中で、「知識を伝えるだけでなく、もっと直接的に人の健康に貢献したい」という思いが強くなりました。
特に受験生の健康管理に関わる中で薬学に興味を持ち、32歳で薬学部へ進学。
6年間の学びを経て薬剤師資格を取得しました。
現在はドラッグストアの薬剤師として働き、薬の効果や飲み方を丁寧に説明する服薬指導で力を発揮しています。
塾講師時代に培った「わかりやすく伝える力」は、年配の患者さんへの説明にも大いに役立っているそうです。
「教える立場から学ぶ立場に戻るのは勇気がいりましたが、今は二つのキャリアを持てたことに感謝しています」とBさんは振り返ります。
事例3:元看護師から調剤薬局の薬剤師へ
Cさんは10年間看護師として病院に勤務していましたが、薬の効果や副作用についてもっと深く学びたいと考えるようになりました。
患者さんのベッドサイドで薬の質問を受けることが多く、より専門的な知識を身につけたいという思いから薬学部への進学を決意しました。
看護師としての医療知識は薬学の勉強にも大いに役立ち、臨床現場を知っているという強みを活かして薬剤師国家試験にも無事合格。
現在は調剤薬局で働き、医療機関との連携や患者さんへの服薬指導に力を入れています。
「看護師と薬剤師、二つの医療職の経験があることで、患者さんの状態をより多角的に見られるようになりました」とCさんは言います。
看護師時代の経験を活かし、患者さんの体調や生活背景を考慮した服薬指導を行うことで、地域の医療に貢献しています。
事例4:元会社員(営業職)から病院薬剤師へ
Dさんは製薬会社のMR(医薬情報担当者)として8年間勤務していました。
医師や薬剤師に薬の情報を提供する仕事の中で、「もっと薬について深く理解し、患者さんの治療に直接関わりたい」という思いが芽生えました。
34歳で思い切って薬学部に入学。
MR時代の薬の知識や医療現場とのつながりを活かして勉強に励み、卒業後は病院薬剤師として活躍しています。
「営業職で培ったコミュニケーション能力は、医師や看護師との連携や患者さんへの説明に役立っています」とDさん。
製薬会社での経験を活かし、最新の医薬品情報にも精通した薬剤師として、チーム医療の一員として重要な役割を果たしています。
事例5:元バリスタから地域薬局の薬剤師へ
Eさんは人気カフェでバリスタとして接客のプロとして働いていました。
しかし、コロナ禍で店舗の営業時間短縮や不安定な収入に悩み、安定した資格職への転身を考えるようになりました。
「カフェで健康に関する質問を受けることが多く、もっと専門的に人々の健康をサポートしたい」という思いから、28歳で薬学部に入学。
アルバイトをしながらの6年間は大変でしたが、持ち前の明るさと接客力で乗り切りました。
現在は地域の薬局で働き、カフェ時代に培った笑顔での対応が患者さんに好評です。
「お客様一人ひとりに合ったコーヒーを提供していたように、一人ひとりの患者さんに合った薬の説明ができるよう心がけています」とEさんは語ります。
事例6:元デザイナーからクリエイティブな薬剤師へ
Fさんは広告代理店でグラフィックデザイナーとして活躍していましたが、不規則な生活や将来への不安から安定した資格職を目指すようになりました。
健康に関心があったこともあり、36歳で薬学部に入学する決断をしました。
卒業後は地域の薬局で薬剤師として働きながら、デザインのスキルを活かして薬局のPOPや患者向け説明資料を作成するなど、クリエイティブな面も発揮しています。
「デザイナー時代に培った視覚的に伝える力は、高齢者や子どもへの薬の説明に非常に役立っています」とFさん。
異色の経歴を持つ薬剤師として、薬局に新しい風を吹き込んでいます。
事例7:元フィットネスインストラクターからスポーツファーマシストへ
Gさんはスポーツジムでフィットネスインストラクターとして健康指導をしていました。
アスリートの健康管理やサプリメント相談を受ける中で、「もっと科学的根拠に基づいたアドバイスをしたい」と薬学に興味を持ちました。
33歳で薬学部に入学し、スポーツファーマシスト(スポーツ選手の薬の相談に応じる専門薬剤師)の資格も取得。
現在はスポーツ選手向けの薬局で働き、ドーピング防止教育にも携わっています。
「フィットネスインストラクター時代の経験があるからこそ、アスリートの気持ちや悩みを理解できる薬剤師になれました」とGさん。
トレーニングの知識と薬学の専門性を組み合わせた独自のキャリアを築いています。
あなたも薬剤師に!異業種から挑戦する5つのステップ
異業種から薬剤師を目指すには、計画的な準備と覚悟が必要です。
以下の5つのステップを参考に、あなたも新たなキャリアへの一歩を踏み出してみませんか?
ステップ1:薬学部の選択
日本の薬学部は6年制であり、卒業すると薬剤師国家試験の受験資格が得られます。
社会人向けの入試枠を設けている大学も増えているので、働きながら学べる夜間部や通信制の選択肢もチェックしましょう。
全国薬学部一覧で各大学の特色や社会人受け入れ状況を確認できます。
ステップ2:受験準備
薬学部の入試では、理系科目(特に化学や生物)が重視されます。
社会人入試では、小論文や面接で社会経験をアピールすることも可能です。
基礎学力を固めるために、独学や予備校の活用を検討しましょう。
ステップ3:学び直しの覚悟
6年間という長い時間と学費の準備が必要です。
奨学金や教育ローンの活用、パートタイムでの働き方など、経済面の計画も重要です。
家族の理解と協力も成功の鍵となります。
ステップ4:国家試験対策
薬剤師になるためには、国家試験に合格する必要があります。
在学中から計画的に勉強を進め、過去問題の分析や予備校の講座を活用するのも効果的です。
社会人経験を活かした効率的な学習方法を見つけましょう。
ステップ5:就職活動
調剤薬局、病院、ドラッグストア、企業など、薬剤師の活躍の場は多岐にわたります。
過去の職歴を活かせる職場を選ぶことで、あなただけの強みを発揮できるでしょう。
就職活動では、異業種経験をどう薬剤師の仕事に活かせるかをアピールすることが重要です。
薬剤師への転職Q&A:よくある疑問をスッキリ解決
Q1:30代や40代でも薬学部に入れますか?
A1:はい、可能です。
多くの薬学部では社会人入試枠を設けており、年齢制限を設けていません。
社会人の経験を評価する入試方法を採用している大学も増えています。
実際に30代後半や40代で入学し、薬剤師になった例は数多くあります。
Q2:異業種の経験は薬剤師の仕事に活かせますか?
A2:大いに活かせます。
接客業での対人スキル、教育職での説明力、クリエイティブ職での表現力など、どんな職種の経験も薬剤師として働く上で価値ある財産となります。
むしろ、多様な背景を持つ薬剤師が増えることで、医療現場に新しい視点がもたらされています。
Q3:薬学部の学費や生活費はどう捻出すればいいですか?
A3:薬学部の6年間で必要な学費は、国公立で約350万円、私立で約1200万円程度です。
社会人学生向けの奨学金、教育ローン、大学独自の支援制度などを活用できます。
また、アルバイトやパートタイムでの勤務を続けながら学ぶ人も多いです。
家族の理解と協力も重要なポイントになります。
筆者は・・・。
私は薬学生時代、6人兄弟、世帯年収約400万円のかなり経済的に厳しい家庭でした。
そのため2つの就学支援を活用しておりました。
①独立行政法人日本学生支援機構の第二種奨学金
貸与月額は14万円でした。
※当時、成績が振るわず第一種奨学金を貸与していただくことはできませんでした。
第一種では無利子となるため、条件を満たした方はそちらの利用をおすすめします。
第二種との併用も可能です。
②生活福祉協議会の教育支援資金
貸与月額は6.5万円でした。
こちらは無利子のためとても助かっています。
各市町村でご相談いただけます。
Q4:文系出身でも薬剤師になれますか?
A4:可能です。
薬学部では確かに理系科目が中心となりますが、1年次では基礎科目として理系科目を学べますので問題ありません。
文系出身者でも、勉強の仕方を工夫することで十分対応できます。
むしろ、文系的な視点や考え方は、患者さんとのコミュニケーションや医療の人間的側面において強みになることがあります。
まとめ:異業種から薬剤師へ、あなたの可能性を信じて

花屋、塾講師、看護師、営業職、バリスタ、デザイナー、フィットネスインストラクター—さまざまな職種から薬剤師への道を歩んだ7つの事例を紹介しました。
彼らに共通するのは「新しい挑戦への勇気」と「過去の経験を活かす工夫」です。
薬剤師という職業には、安定した収入と将来性、社会貢献度の高さ、多様な働き方という魅力があります。
異業種経験は決してムダではなく、むしろあなただけの強みとなるのです。
今からでも遅くありません。
あなたのこれまでの経験が、薬剤師として新たに輝く可能性を秘めています。
「自分にもできるのでは?」と感じたなら、まずは情報収集から始めてみませんか?
【あなたの一歩を応援します】 この記事を読んで薬剤師を目指してみたい、もっと詳しく知りたいと思った方は、ぜひコメント欄で質問やご自身のキャリアチェンジへの思いをシェアしてください。
参考資料
1)メディカルアーク【2021年度】全国の薬学部 学費・偏差値ランキング
3)マイナビ薬剤師